憶や一身や名前などが永続してその作品が滅びることをか、あるいは、その作品が存続してその一身と名前とが跡方もなく滅びることをか?」
彼は躊躇《ちゅうちょ》せずに答えた。
「俺《おれ》が滅びて俺の作品が存続することだ! それが俺には一挙両得なのだ。なぜなれば、もっともほんとうのものだけが、唯一のほんとうのものだけが、俺から残ることになるのだから。クリストフは死滅するがよい!」
しかししばらくたつと、彼は自分自身にたいすると同様に自分の作品にたいしても無関心になったのを感じた。自分の芸術の存続を信ずることの幼稚なる幻よ! 彼は自分の作ったものがいかに僅少《きんしょう》であるかをはっきり見てとったばかりでなく、近代音楽全体をねらってる破壊の力をもはっきり見てとった。他のいかなるものよりもいっそう早く音楽上の言葉は燃えつきる。一、二世紀もたてば、それはもはや数人の専門家によってしか理解されない。モンテヴェルディやリュリーなど、現在だれにとって生きてるか。古典音楽の森の樫《かし》の木もすでに苔《こけ》に食われてる。われわれの熱情が歌ってるわれわれの音楽の建築も、やがては空虚な殿堂となって忘却の
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