教者や英雄などを出した自由[#「自由」に傍点]にたいする信念、人類にたいする愛、諸国民や諸民族の親和にたいする敬虔《けいけん》な翹望《ぎょうぼう》――それをこれらの青年らは何たる盲目な暴戻《ぼうれい》さをもって冒涜《ぼうとく》してることだろう! われわれが征服したあの怪物を愛惜し、われわれが折りくじいたあの軛《くびき》の下にまたみずからつながれ、暴力の世を大声に呼びもどし、憎悪をふたたび燃えたたせ、わがフランスの心中に戦争の狂気をふたたび起こさせるとは、なんたる狂乱した仕業だろう!
「それはフランスばかりではない、世界全体がそうなんだ。」とクリストフは笑うような様子で言った。「スペインからシナに至るまで、同じ突風が吹き渡っている。その風を避けられる片隅《かたすみ》もありはしない。ねえ、おかしなことになってきたじゃないか、あのスイスまでが国家主義になっている。」
「それで気が安まるのですか?」
「安まるとも。これによって見ると、そういう風潮は数人の滑稽《こっけい》な熱情から来たものではなくて、世界を統ぶる隠れた神から来たものらしい。そしてその神にたいしては、僕は頭を下げることを覚えたのだ
前へ
次へ
全340ページ中303ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング