懐疑も信念も共に必要である。懐疑は昨日の信念を滅ぼして、明日の信念の場所をこしらえるのである……。美しい画面にたいするように、人生から少し遠のいて、近くで見ればたがいに衝突してる種々の色彩が、玄妙な調和のうちに融《と》け合うのを見る者にとっては、いかにすべてが光り輝いてることだろう!
クリストフの眼は、精神界とともに物質界の無限の多様さにたいしても開かれていた。それはィタリーへ初めて旅したときからの獲物《えもの》の一つであった。パリーで彼はことに画家や彫刻家と交際を結んだ。そしてフランス人の天才のもっともよきものは彼らのうちにあることを見出した。彼らが物の動きを追求し、震える色を瞬間にとらえ、人生がまとってる覆面をはぎ取ってる、その堂々たる大胆さは、人の心を愉快の念で躍《おど》り立たせるほどのものがあった。見ることを知ってる者にとっては、光の一滴も無尽蔵な豊富さを有するのである。精神のかかる崇厳な愉悦に比ぶれば、論争や戦争のいたずらな騒擾《そうじょう》がなんであるか?……しかしそれらの論争やまた戦争も、霊妙なる光景の一部をなしてるのである。すべてを抱擁しなければいけない。われわれの心
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