って、まだ壁の此方《こちら》に引き止められていた。そしてこんどはグラチアも……。今や扉は苦悩の世界にたいして閉ざされてしまった。
 彼は内的|昂揚《こうよう》の時期を過ごした。彼はもうなんらの鎖の重荷をも感じなかった。もう何事をも期待しなかった。もう何物にも従属しなかった。自由の身であった。戦いは終わってしまった。勇壮なる争闘の神――万軍の主たる神[#「万軍の主たる神」に傍点]――が君臨している圏内から外に出で、戦争地域から外に出でて、彼は自分の足下に、燃ゆる荊[#「燃ゆる荊」に傍点]の炬火《きょか》が暗夜のうちに消えてゆくのをながめた。ああすでにその炬火もいかに遠くなってることぞ! 彼はその光に道を輝《て》らされてたときには、もうほとんど絶頂に達したものだと思っていた。それから後いかほど歩いてきたことだろう! それでも頂は少しも近くなったようには見えなかった。永久に歩きつづけても頂には達せられないかもしれない(彼は今やそのことを知っていた。)けれども、光明の圏内にはいり込むときには、愛する人々をあとに残してゆかないときには、その人々といっしょに道を進む以上は永久もさほど長いものではな
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