様子を作るため二、三の物をあちこちへ動かし、身動きもしないでいるクリストフのほうをふたたびながめた。自分がいかに同情してるかを告げたかった。しかしクリストフがいかにも晴れやかな顔をしてるので、彼はどんな言葉もみなそぐわないのを感じた。彼自身のほうがむしろ慰安を求めてるほどだった。彼はおずおずと言った。
「もう帰ります。」
 クリストフは振り向きもしないで言った。
「ではまた。」
 ジョルジュは外に出て、音のしないように扉《とびら》を閉めた。
 クリストフは長い間そのままでいた。夜となった。彼は苦しみもしなかったし、考えもしなかった。なんらのはっきりした形象もなかった。ある朧《おぼ》ろな音楽に理解しようともせずに聞き入ってる、疲れきった人に似ていた。夜が更《ふ》けたころ、彼は気力つきて立ち上がった。寝床の中に飛び込んで、重い眠りにはいった。交響曲《シンフォニー》はなお響いていた。
 そして今、彼は彼女[#「彼女」に傍点]を見た、いとしき彼女を……。彼女は彼のほうへ両手を差し出し、微笑《ほほえ》みながら言っていた。
「もうあなたは火界を通り越しました。」
 すると彼の心は和らいだ。平安が星
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