分の音楽に生きることによって、彼はその魂を娶《めと》りその魂を所有した。その神秘な結合から、混和した彼ら二人の果実とも言うべき音楽作品が生まれてきた。彼はある日、自分の実質と彼女の実質とで織り出された作曲集を彼女にささげながら、そのことを彼女へ言った。
「私たちの子供です。」
二人いっしょにいても離れていても、常に破れることのない一致同心。古い家の沈静ななかで過ごす宵々《よいよい》の楽しさ。その古い家では、あたりの様子がグラチアの面影にちょうどふさわしく、またその無口な懇切な召使たちは、彼女にいかにも忠実であって、その女主人にささげてる敬愛を多少、クリストフの上にも移していた。また、過ぎゆく時《タイム》の歌を二人で聞き、流れ去る生の波を二人で見るの喜び……。そういう幸福の上に、グラチアの健康の衰えは一つの不安な影を投じた。しかし彼女は種々の軽い患《わずら》いにもかかわらず、非常に晴れ晴れとしていたので、その隠れた病苦もただ彼女の魅力を増すばかりだった。彼女は彼にとって「光り輝いた顔をしてる親愛な病める傷《いた》ましい友」であった。そして彼は、彼女のところからもどってきて、愛情で胸がい
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