なわせて、その代わり相手の悩みを身に引き受けていた。かくて苦しみも喜びとなった。クリストフはグラチアを「自分の聴罪師」と呼んでいた。自尊心が傷つけられるような弱点をも彼女には隠さなかった。極度の悔悟の念で弱点を自責した。すると彼女は微笑《ほほえ》みながら、その老お坊っちゃんの謹直な懸念を和らげてくれた。彼は物質上の困窮までも彼女に白状した。けれどそれまでに至るには、彼女は何も提供せず彼は何も受けないということが、二人の間にきめられてからであった。それは彼が維持し彼女が侵さない最後の自尊の垣根《かきね》だった。彼女は彼の生活に安楽を与えることが禁じられていたから、彼にとってはそれよりはるかに貴重なものを、すなわち彼女の情愛を、彼の生活のうちに広げようとくふうした。そして彼は彼女の情愛の息吹《いぶ》きを、いかなるときにも自分の周囲に感じた。朝に眼を開くときにも、晩に眼を閉じるときにも、彼はかならず恋しい憧憬《どうけい》の無言の祈りをささげた。そして彼女のほうでは、眼を覚《さ》ますとき、またはしばしば夜中に幾時間も眠れないようなとき、いつもこう考えた。
――あの人が私のことを思っていてくれ
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