を、知っていた。彼女はリオネロの欺瞞《ぎまん》に欺かれてはいないが、それでもやはりリオネロを鍾愛《しょうあい》してるということを知っていた。そういう家庭的情愛の盲目な利己心を、彼は知っていた。その情愛のために、一家のうちでもっともすぐれた人々は、邪悪なあるいは凡庸な血縁の者のために、献身の全量を使い果たしてしまい、したがって、その献身を受くるにもっともふさわしく、彼らがもっとも愛してはいるが、しかし彼らと同じ血統でない人々に向かっては、もはや与うべきものが何も残らないのである。そしてクリストフは、そのために憤りを感じはしたが、また時としては、二人の生活を破壊してる小さな怪物を殺したくなることもあったが、やはり黙って忍従して、グラチアが他に取るべき道のないことを理解するのだった。
そして彼らは二人とも、無駄な逆らいをせずにあきらめていた。しかし彼らに当然なその幸福を人は盗むことができても、彼らの心が結合するのを何物も妨げることはできなかった。諦《あきら》めそのものが、共同の犠牲が、肉体の結合よりもいっそう深く二人を結びつけていた。二人はたがいに自分の悩みを相手に打ち明け、それを相手にに
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