」
そして彼はまた新たに激しく無性に咳《せ》きこんだ。グラチアはびっくりした。彼女はちょっと彼が無理に咳をしてるような気がした。しかし彼が汗を流し息をはずませてるのを見るとみずからそれをとがめた。そして彼を抱擁してやり、やさしい言葉をかけてやった。彼は落ち着いてくるようだった。けれど彼女がそばを離れようとすると、彼はすぐにまた咳を始めた。彼女は震えながら彼の枕頭《ちんとう》についていなければならなかった。彼は彼女が着物を着に立ち去ることさえ許さなかったし、彼女に手を握っていてもらいたがった。そして寝入るまで彼女を少しも離さなかった。彼が寝入ってから彼女は、凍え慴《おび》え疲れはてて床にはいった。そしてふたたび自分の夢想を呼び出すことはできなかった。
この子供は母親の考えを読みとることに不思議な能力をそなえていた。同じ血を分けた人々の間にはそういう本能的な才能がしばしば――しかしこれほどの程度のは珍しいが――見出されるものである。相手の考えてることを知るためには、ほとんどその顔を見るにも及ばない。眼にも止まらぬ多くの兆候で推察してしまう。共同の生活によって強めらるるそういう天性は、
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