ますます息子を愛するばかりだった。

 そのうち、数年来リオネロのうちにきざしかけた病気が突然発した。結核病が現われた。グラチアは彼とともにアルプス山中の療養院へ行こうと決心した。クリストフは同行を求めた。彼女は世評を慮《おもんぱか》ってそれを断わった。彼は彼女がひどく因襲を重んじてるのがつらかった。
 彼女は出発した。娘はコレットのところに残していった。そして、人間の屑《くず》どもの上に平然たる顔をそばだててる非情な自然の中にはいり、自分の病苦のことばかり言ってる病人らの間に交わると、彼女はやがて恐ろしく孤独な心地がした。それらの不幸な人々は、手に痰壺《たんつぼ》をもって、たがいに様子を窺《うかが》いながら、相手のうちに死期の迫るのを見守っていた。そういう悲しい光景をのがれるために、彼女はパラースの病院を去り、小さな山荘を一つ借りて、そこに病気の子供と二人きりで住んだ。リオネロの容態はよくなるどころか、高地のためにかえって重くなった。熱がいっそう高まった。グラチアは心痛のうちに夜々を過ごした。クリストフは彼女からなんらの知らせも受けなかったけれど、鋭くなった直覚力で遠くからそれを感じ
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