を、彼から窓の前にさし示されたとき、彼女は言った。
「これからどうするかおわかりになりまして? おやつをいただくんですよ。私はお茶とお菓子とをもってきました。そんなものはあなたのところにないだろうと思ったものですから。それからまだ他にもって来たものがありますよ。あなたの外套《がいとう》をかしてくださいね。」
「私の外套をですか。」
「ええ、ええ、かしてください。」
 彼女は袋から針と糸を取り出した。
「なんですって、あなたは……?」
「先日私が危《あぶ》ないと思ったボタンが二つありましたわ。今日はどうなっていますかしら?」
「なるほど、私はまだそれを付け直そうとも思わなかったんです。嫌《いや》な仕事なものですから。」
「お気の毒にね! かしてくださいよ。」
「恥ずかしい気がします。」
「お茶の用意をしてくださいよ。」
 彼は彼女に一瞬間も無駄《むだ》にさせまいと思って、湯沸かしとアルコールランプとを室の中に運んできた。彼女はボタンを縫いつけながら、彼の無器用な仕事を意地悪く横目でながめていた。二人は罅《ひび》のはいった茶|碗《わん》でお茶を飲んだ。彼女はひどい茶碗だとは思ったが容赦して
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