ートーヴェンの鋳物の頭像が壁にかかってい、寝台のそばの安物の額縁に、母親とオリヴィエとの写真が入れてあった。箪笥の上にはも一つ写真があった。それは十五歳のおりのグラチアの写真だった。ローマで彼女の家の写真帳の中に見つけて、盗んできたものだった。彼はそれを自白しながら許しを求めた。彼女は写真の姿をながめて言った。
「あなたはあれを私だとおわかりになりますか。」
「わかります。よく覚えています。」
「今の私とどちらがお好きですか。」
「あなたはいつでも同じです。私はあなたをいつまでも同じように好きです。どんなものでもあなたを見てとることができます。ごく小さなときの写真ででも見てとることができます。この幼い姿の中にもあなたの魂をすっかり感じて、私がどんな感じに打たれてるか、あなたは御存じありますまい。あなたが永久に変わらないことを、これほどよく私に知らしてくれるものはありません。私があなたを愛しているのは、あなたの生まれない前からです、そしてずっと……後まで……。」
彼は口をつぐんだ。彼女は情愛をそそられて返辞ができなかった。書斎にもどってきて、雀《すずめ》がさえずってる親しみ深い小さな木
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