ほんとに人の邪魔ばかりして!」
「私もあの女《ひと》を好きです、」とクリストフは言った、「あなたがおっしゃるように、好きというのは私たちの邪魔をするという意味になるんでしたら。」
グラチアは笑った。
「まあお聞きなさい、……私に許してくださいますか……(ここでは落ち着いて話をすることはまったくできません)……私に許してくださいますか、一度あなたのところへ伺うのを?」
彼はびっくりした。
「私のところへ! あなたがいらっしゃるんですって!」
「お嫌《いや》じゃありませんか。」
「嫌ですって! まあとんでもない!」
「では、火曜日はいかがでしょう?」
「火曜でも水曜でも、木曜でも、いつでもおよろしい日に。」
「それでは火曜日の四時ごろ伺います。ようございますか。」
「あなたは親切です、ほんとに親切です。」
「お待ちなさい、条件がありますわ。」
「条件? そんなものが何になりましょう? お望みどおりに私はします。条件があろうとあるまいと、私がなんでもお望みどおりにすることは、御存じじゃありませんか。」
「私は条件をつけるほうが好きですから。」
「ではその条件を承知しました。」
「まだどん
前へ
次へ
全340ページ中162ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング