手段が尽きるまでは活動せんとする[#「もはやなすべき手段が尽きるまでは活動せんとする」に傍点]」人物の一人だった。彼は今にも消え失せてゆくような心地がした。そして底へ沈み込みながらも、左右に腕を動かして取りすがるべき支《ささ》えを捜し求めた。彼はそれを見出したと思った。オリヴィエの子供のことを思い出したのだった。すぐに彼は自分の生きる意志をことごとくその子供の上に投げかけた。それにしっかとすがりついた。そうだ、その子供を捜し出し、自分のもとに引き取り、育て上げ、愛してやり、父親の代わりをつとめ、オリヴィエをその子のうちに生き返らせてやるべきだった。利己的な苦悩の中にあって、どうして今までその考えを起こさなかったのだろう? 彼は子供を保護してるセシルへ手紙を書いた。そして返事を待ち焦がれた。彼の全存在はその唯一の考えのほうへ向けられた。彼は強《し》いて落ち着こうとした。希望をかけ得る理由が残っていた。彼は大丈夫だと思っていた。セシルの温情をよく知っていた。
返事が来た。セシルの言うところによると、オリヴィエの死後三か月たって、喪服をつけた一人の婦人が彼女のところへ来て、彼女に言った。
「私の子供を返してください!」
それは、前に子供とオリヴィエとを見捨てた女――ジャックリーヌだった。しかしそれと認めがたいほど変わりはてていた。彼女の狂気じみた恋愛は長つづきしなかった。情夫が彼女に倦《あ》きるよりももっと早く、彼女のほうで情夫に倦きはてた。彼女は心くじけ嫌気《いやけ》がさし老い衰えてもどってきた。彼女の情事のあまりに騒々しい醜聞のために、多くの家は戸を開いてくれなかった。もっとも物事を気にかけない人々でもやはり厳格だった。母親でさえもジャックリーヌにたいしては、家にとどまっておれないほど侮辱的な軽蔑《けいべつ》の様子を見せつけた。ジャックリーヌは世間の偽善を底まで見通した。そしてオリヴィエの死によってすっかり圧倒されてしまった。彼女があまりに痛ましげなふうをしていたので、セシルは彼女の要求を拒み得ない気がした。自分のものとして見|馴《な》れていた子供を人に与えるのは、いかにも辛《つら》いことだった。けれども、自分より多くの権利をもち自分よりいっそう不幸である者にたいして、どうしてなお酷薄であられようぞ。彼女はクリストフに手紙を書いて相談しようとした。しかしクリストフ
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