れるのである。……この温情のためにオリヴィエは、友のクリストフによりも、いっそう多くアルノー夫人に接近していった。でもクリストフは、つとめてりっぱな忍耐を事としていた。彼は愛情の心からして、オリヴィエにたいする自分の考えを隠していた。しかしオリヴィエは、苦しみのために鋭敏になってる眼で、友の心中になされてる戦いを見てとり、自分の悲しみが友にはいかに重荷となってるかを見てとっていた。そのためにこんどは彼をクリストフから遠ざけ、クリストフに向かってこう叫びたい気を彼に起こさした。
「僕から去ってくれたまえ。」
かくのごとく、不幸は往々にして愛し合ってる心をもたがいに離れさせるものである。唐箕《とうみ》が穀粒を選《え》り分くるように、不幸は生きんと欲する者を一方に置き、死せんと欲する者を他方に置く。愛よりもさらに強い恐るべき生の法則である。息子《むすこ》の死ぬのを見る母親、友のおぼれるのを見る人――もしその死んでゆく者たちを救い得ない場合には、彼らはやはり自分自身を救おうとして、いっしょに死にはしない。それでも彼らは、その死んでゆく者たちを、自分の生命より何倍となく愛しているのである……。
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