彼女は自分を害する絆《きずな》を断って、当然なことをしたまでである。
「彼女が悪いのではない。」と彼は考えた。「私が悪いのだ。私は誤った愛し方をした。私は深く彼女を愛していた。けれども、彼女に私を愛させることができなかった以上は、私は彼女をほんとうに愛する道を知らなかったのだ。」
 かくて彼は自分をとがめた。おそらくそれが正当だったろう。しかし過去のことを云々《うんぬん》してもそれは大して役にたちはしない。いくら云々したところで、繰り返されるべきことは繰り返される。そして生きることをできなくなす。強者は、人からなされた善を忘れる――のみならずまた、悲しくも、自分のなした害を自分の力で贖《あがな》い得ないと知れば、それをもただちに忘れてしまう。しかし人は、理性によって強者になるのではなく、熱情によって強者になるのである。愛と熱情とはたがいに縁遠い。いっしょに連れだつことはめったにない。オリヴィエは愛していた。彼が強いのは自分自身に反する方面にばかりだった。一度受動的な状態に陥ると、あらゆる病苦にとらえられた。流行感冒、気管支炎、肺炎などが彼に襲いかかった。その夏の大半は病気だった。クリス
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