った。
オリヴィエは、その日彼女がいかに苦しんだかを、まったく知らなかった。しかし彼女と顔を合わしたとき、彼もまた万事終わったという気がした。
それ以来二人は、他人の前にいるときしかたがいに口をきかなかった。あたかも狩りたてられて用心し恐れている二匹の獣のように、彼らはたがいに観察し合った。ジェレミアス・ゴットヘルフは、もう愛し合わなくてたがいに監視し合ってる夫婦の痛ましい状態を、無慈悲な質朴《しつぼく》さで描いている。その二人はおのおの相手の健康をうかがい、病気の徴候を待ち受けており、しかも相手の死を早めようと考えてるのではなく、また相手の死をねがってるのでもないが、ただ不慮の事変を待ち望むようになり、そしてたがいに自分のほうが頑丈《がんじょう》だと喜んでるのである。ジャックリーヌとオリヴィエとはときどき、それに似た考えを相手がいだいてるように想像することがあった。がどちらも実際そういう考えをいだいてはしなかった。とは言え、相手にそういう考えがあるように思うだけでも、よくよくのことである。たとえばジャックリーヌは、夜中に幻覚的な不眠に襲われるとき、相手のほうが自分より強くて、自分
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