の洞察《どうさつ》的な愛が自分の上にのしかかってくるのをもう感じなくなると――自分の身が自由になると――ただちに、二人の間になお存していた親しい信頼に引きつづいて、彼女のうちに起こってきたものは、自分自身を相手の手中に委《ゆだ》ねたという怨恨《えんこん》の情であり、もう実際に感じていない愛情の軛《くびき》を長らく負っていたという憎悪《ぞうお》の情であった……。相手に愛せられまた相手を愛してるらしい女の心の中に生ずる、一徹な怨恨を、だれが説明し得よう! 今日《きょう》と明日《あす》との間にすべては一変する。前日まで彼女は、愛していたし、愛してるようだったし、自分でも愛してると思っていた。しかし今日はもう愛していない。彼女が愛した男は彼女の考えの中では抹殺《まっさつ》される。男は自分が彼女にとってはもう無に等しいことを突然気づく。そして訳がわからなくなる。彼女のうちで行なわれていた長い間の働きを少しも見てとらなかったのである。自分にたいして積ってきた彼女のひそかな敵意を夢にも知らなかったのである。彼はそういう返報や憎悪の理由を感じようとはしない。その理由はたいてい遠い数多くのおぼろなもので
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