るのだ。そして彼女は、オリヴィエとの共同生活から得た道徳的な一徹さをまだ失わないでいて、それを不道徳な行ないにまで応用しようとしていた。
 彼女の新しい友人らはきわめて用心深くて、自己の真相をなかなか他人に示さなかった。理論の上では、道徳と社会とのもろもろの偏見にたいして、完全なる自由を看板としていたが、実行においては、自分らの利益となるような人とは、真正面から仲違《なかたが》いすることのないように振る舞っていた。あたかも主人のものをごまかす不忠実な召使のように、彼らは道徳と社会とを悪用していた。習慣と閑散とのためにたがいに盗み合ってさえいた。自分の妻が情夫をもってることを知ってる者が幾人もいた。また細君のほうでも、夫が情婦をもってることを知らないではなかった。そして彼らはよく和合していた。人の噂《うわさ》がたたなければ憤慨しなかった。そういう仲のよい夫婦生活は、関係者たち――共犯者たちの間の暗黙な了解の上にたっていた。しかしジャックリーヌは彼らよりいっそうまっ正直であって、生一本《きいっぽん》な行動をしていた。一にも二にも真面目《まじめ》であり、常住不断に真面目だった。真面目というこ
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