ちから、客間の演奏をたびたび頼まれた。クリストフ自身も、それらの音楽会に招かれて、その一つにやむを得ず行ってみると、大使から非常に歓待された。それでも少し話をしてみると、大使はあまり音楽趣味がなくて、彼の作品については少しも知るところがなかった。ではいったい、こういう突然の同情はどこから生じたのだろうか? 見えざる一つの手が、彼を庇護《ひご》してくれ、障害を除いてくれ、道を平らにしてくれてるがようだった。クリストフは探ってみた。大使はそれとなく彼の二人の味方をほのめかした。それはベレニー伯爵夫妻であって、彼に非常な好意をいだいてるのだった。クリストフはまだその二人の名前さえ知らなかった。大使館へ来た晩には、二人に紹介される機会がなかった。が彼は強《し》いて二人を知ろうとはしなかった。彼はちょうど人間が嫌《きら》いになったときであって、味方をも敵をも同様に信用していなかった。味方も敵も同じように不確かなものだった。ちょっとした風の調子で変わってしまうのだった。そういうものなしにやってゆけることを学ばなければいけなかった。十七世紀のあの老人のように言わなければいけなかった。
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