こう書いている。
[#ここから2字下げ]
感謝の様子を示すのをきらう者は、きわめてまれである。ただ、もっとも憐《あわ》れな階級から出て来て、恩恵者の下劣さにたいていいつも毒されてる助力を、一歩ごとに受けなければならなかったような、著名な人々のみが、この嫌悪《けんお》の情を表わすものである。
[#ここで字下げ終わり]
クリストフは、世話をされたのにたいして、こちらで身を卑《ひく》くしたりまた自由を捨てたり――その二つは彼にとっては同一事だった――しなければならないとは、考えていなかった。彼は恩恵をそんな高利で貸しつけはしないで、ただで与えていた。ところが彼に恩をきせた者たちのほうでは、少し違った意見をもっていた。債務者にはそれだけの義務があるという至って高い道徳観念をもっていた。それで、この新聞の主催になるある広告的祝賀のために、ばかばかしい祝賀音楽を書くことを、クリストフが断わると、彼らは気持を悪くした。彼にその行為の無作法さを思い知らしてやった。彼はそれを撃退した。それからしばらくたって、彼の主張だとその新聞が書きたててる事柄について、彼は猛烈に誤りを指摘したので、ついに彼ら
前へ
次へ
全339ページ中216ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング