。彼のほうでも、彼女のところへ出かけて行かなかった。またフィロメールの家へも行かなかった。彼はその二人をたいへん好きではあった。しかし心悲しくなるような話が出るのを恐れていた。それにまた、彼女らの静平な凡庸な生活やあまりに希薄な空気は、今のところ彼の気に入らなかった。彼は新しい顔をながめたかった。新しい同情に接し、新しい愛に接して、ふたたび心を取り直さなければならなかった。

 彼は気を紛らすために、久しい前から閑却していた芝居へまた行きだした。そのうえ芝居というものは、情熱の抑揚を観察し書き留めんと欲する音楽家にとっては、興味ある一つの学校のように思われた。
 と言っても彼はフランスの戯曲にたいして、パリーへ来た当初よりも多くの同情をもち得たのではなかった。恋愛的精神生理学の無味乾燥な卑しいいつも同一な題材にたいして、彼はあまり趣味をもたなかったばかりでなく、フランスの芝居の言葉は、ことにその詩劇において、この上もなく虚偽なもののように彼には思えた。その散文も韻文も、民衆の生きた言葉とは、民衆の精神とは、合致していなかった。散文は、よいほうでは社会記事的なこしらえられた言葉であり、悪
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