なかった。そしてこの若い夫婦は、やさしい勤勉な親愛の生活をかなり長くつづけてゆけるはずだった。ところがある事情のため、生活の物質的条件が一変をきたして、その脆《もろ》い平衡を破ってしまった。
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そこにてわれらは大敵プルートーを見出せり[#「そこにてわれらは大敵プルートーを見出せり」に傍点]……。
[#ここで字下げ終わり]
ランジェー夫人の姉妹の一人が死亡した。それは富裕な工業家の寡婦であって、子供がなかった。でその財産はすべてランジェー家に渡った。ジャックリーヌの財産もそのためにたいへん増加した。その相続財産がやって来たとき、オリヴィエは金銭に関するクリストフの言葉を思い出して、こう言った。
「そんなものはなくてもいいじゃないか。かえって禍《わざわい》になるかもしれない。」
ジャックリーヌは嘲笑《あざわら》った。
「馬鹿なことをおっしゃるわね。」と彼女は言った。「禍になるなんてことがあるものですか。第一私たちの生活だって、そのためにちっとも変わりはしないでしょう。」
実際二人の生活は表面上少しも変わらなかった。まだ財産が足りないというジャックリーヌの嘆声
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