{帳面《きちょうめん》に葬式の列に加わったが、そのあとですぐに出発してしまって、オリヴィエへ向かって一言も、兄の消息も尋ねなければ、母のために尽くしてくれた礼も言わなかった。オリヴィエはなお数時間町で過ごした。町には、生きてる者で彼の知人は一人もいなかったが、多くの親しい故人の影が宿っていた。少年クリストフ、クリストフが愛してた人々、クリストフを苦しめた人々――それから、なつかしいアントアネット……。この土地に生きてたそれらの人々から、今はもうなくなってるクラフト家の一家から、何が残っていたか? 一外国人の魂の中にある彼らにたいする生きた愛情、そればかりであった。
その午後、待ち合わせる約束の国境の停車場で、オリヴィエはクリストフに出会った。それは木立深い丘の間の小村だった。二人はパリー行きのつぎの汽車をそこで待たないで、道中の一部をつぎの町まで徒歩で行くことにきめた。彼らは二人きりになりたがっていた。遠くに斧《おの》の鈍い音が響いてる黙々たる森の中を、彼らは歩きだした。丘の頂の空地に達した。眼下には、なおドイツ領である狭い谷間に、森番人の家の赤い屋根、森中の緑の湖水のような小さな
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