黷ツの悲劇だ。」とクリストフは言った。「悲劇を歓呼せんかな!」

 大波は消えていった。すべての人々がひそかな恐れをいだいて急いで忘れようとした。だれももう先ほどからの出来事を覚えていないようなふうだった。それでもなおそのことを考えてるのが認められた。なぜなら、彼らは皆喜ばしい様子で、ふたたび生活に、脅かされたときに初めて全価値がわかる日常の善良な生に、心を寄せていた。ちょうど危険が一つ過ぎ去ったかのように、以前に倍加した執着を示していた。
 クリストフは以前に数倍した熱心さで、また制作に身を投じた。オリヴィエをもいっしょにそれへ引き込んだ。二人は陰鬱《いんうつ》な思想にたいする反動から、ラブレー風の叙事詩をいっしょに制作し始めた。その叙事詩は精神的圧迫の時期の後に来る強健な唯物主義の色を帯びていた。その伝説的な主人公――ガルガンチュア、法師ジャン、パニュルジュ――にオリヴィエは、クリストフの感化で、新しい人物を一人加えた。それはパシアンスという百姓であって、素朴《そぼく》な、小賢《こざか》しい、ずるい男で、打たれ、奪われ、勝手なことをされ――妻を愛され、畑を荒らされ、人からされるまま
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