ス。「この民衆は俺《おれ》のものだ、なぜなら俺の兄弟だから、」と言う権利をだれがもってるものぞ。もしその兄弟がそのことを否認するならば、たとい非常に不当な否認であろうとも、その不当さはみな、自分を愛させることができなかった者の上に、したがって自分の運命に彼らを結びつけるなんらの権利もない者の上に、落ちかかってくるのである。アルザスの人々は、四十年の間、種々の暴虐を受け、あるいは苛酷《かこく》にあるいは隠密にいじめつけられ、また、ドイツの正確な賢い統治によって実際利するところさえあったがなお、ドイツ人となることを望んでいなかった。そして、彼らの意志が疲れてついに譲歩するに及んでも、数時代の人々の苦しみ――生まれた土地から亡命することを余儀なくされ、もしくは、さらに痛ましいことには、その土地から離れることができずに、そこで忌まわしい覊絆《きはん》を、国が奪われ人民が隷属させられることを、甘受しなければならなかった、数時代の人々の苦しみ、それは何物にも消されることができなかった。
 クリストフは、問題のそういう方面をかつて考えてもみなかったことを、率直にうち明けて言った。彼はそのことから心を
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