sごうまん》さをみずから不快に感じながらも、また、ブルンスウィック的なその強要にたいするフランス人の憤慨にある程度まで賛同しながらも、彼はフランスがどうしてドイツの同盟者になろうとしないかを、よく理解することができなかった。結合すべき理由の多くを、共通な思想の多くを、また共に完成すべき大なる仕事の多くを、両国はもってるように彼には思えたので、両国が無益な怨恨《えんこん》に固執してるのを見ると、不満を感ぜさせられた。すべてのドイツ人と同じく彼も、その不和についておもに罪があるのはフランスだと見なしていた。なぜなら、彼の考えによれば、敗北の思い出がいつまでも拭《ぬぐ》われないのは、フランスにとってつらいことであると認められはするものの、それは単に自尊心の事柄にすぎなくて、文化とフランス自身とのより高き利害の前には、当然消散すべきものであった。かつて彼はアルザス・ローレンの問題に考慮を向けたことがなかった。両州の併合は、数世紀間外国に付属した後にドイツの土地をドイツ祖国内に取りもどしたという、正当行為として考えるように、学校で教わってきたのだった。それで、自分の友がそれを罪悪だと見なしてるの
前へ 次へ
全333ページ中284ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング