ッなかったような、ひそかな喜びの表情を浮かべていた。彼女は彼らになんらの注意も向けなかった。けれども出かけるさいに、彼女はクリストフを見かけて、手を差し出して言った。
「あなたのおかげで救われました。」
「どうしたというんだろう、あんな変な真似《まね》をして?」とクリストフは階段を上がって行きながら、びっくりした様子でオリヴィエに尋ねた。
それから数日たつと、彼は一枚の写真を郵送された。写真には、一人の見知らぬ娘が、腰掛にすわって、小さな手を膝《ひざ》の上に行儀よく組み合わせ、清らかな愁《うれ》わしい眼で彼をながめていた。その下に、つぎのような文句が書いてあった。
――亡くなった私の娘があなたに御礼を申し上げます。
かくてそれらの人の間に、新しい生の息吹《いぶ》きが通っていった。上のほうに、六階の屋根裏に、力強い人間性の炉が燃えていて、その光が徐々に家の中へさし込んでいった。
しかしクリストフは少しもそれに気づかなかった。彼にとってはそれはあまりに緩慢だった。
「ああ、」と彼は嘆息した、「各種の信仰をもち各種の階級に属していて、たがいに知り合うことさえ望んでいないあのりっぱな
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