「に不平を言い合っていた。りっぱな人たちほど頑固《がんこ》だった。クリストフは同じ家の中にその実例を見出した。フェリックス・ヴェール氏と技師エルスベルゼと少佐シャブランとは、暗黙な敵意をたがいにいだいていた。それでも、彼らはその党派や種族の異なった作法のもとにありながら、みな同じものを望んでるのだった。
ヴェール氏と少佐との間には、ことに理解し合える多くの理由があるようだった。ヴェール氏は書物を手放したことがなく精神生活のうちにばかり生きていたので、思想を事とする人々のうちによく見かける一種の矛盾から、軍事上の事柄をたいへん面白がっていた。「われわれはみな断片でできている[#「われわれはみな断片でできている」に傍点]、」と半ばユダヤ人のモンテーニュは、ヴェール氏が属してるような精神上のある種族についてのみ真実であることを、万人に適用して言っている。この知的な老人ヴェール氏は、ナポレオンを崇拝していた。大帝の偉業の花やかな夢想がよみがえってる文書や記念物に取り囲まれていた。この時代の多くのフランス人と同じく、その栄光の太陽の遠い光に眩惑《げんわく》されていた。その戦役をやり直し、戦いを
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