ゥった。敵と戦わないことはもっとも悪い敵たることである。しかしそれらの多少りっぱなフランス人らのうちには、ある棄権的な精神が、不思議な見切りの心が存在していた。――クリストフはそれのさらに痛切なものを、少佐の娘のうちに見出した。
 彼女はセリーヌという名だった。丁寧に櫛《くし》を入れてシナ風に編んだ細かな髪をもっており、その下から高い丸い額《ひたい》とややとがった耳とがのぞいていて、痩《や》せた頬《ほお》、素朴な優美さの愛くるしい頤《あご》、黒い怜悧《れいり》な打ち解けたごくやさしい近視の眼、多少太い鼻、上唇《うわくちびる》の隅《すみ》の小さな黒子《ほくろ》、やや脹《ふく》れた下唇をかわいらしくとがらして突出させるしずかな微笑、などをもっていた。彼女は親切で活発だったが、精神的な好奇心にひどく欠けていた。あまり書物を読むことがなく、新しい書物を少しも知らず、けっして芝居へ行かず、けっして旅行をせず――(父親は昔あまり旅をしたので旅行に飽いていた)――なんらの世間的慈善事業にもかかわらず――(父親はそういう事業を非議していた)――少しも勉強しようとはせず――(父親は女の学者をあざけってい
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