フか彼自身でも知らなかった。彼はただ幸福であるばかりだった。自分を発露することが幸福であり、自分のうちに普遍的な生命の脈搏《みゃくはく》を感ずるのが幸福であった。
そういう喜びと豊満とは、彼の周囲の人々へも伝わっていった。
四方ふさがってる庭園付きのその建物は、彼にはあまりに小さすぎた。大きな径《みち》と百年以上もの古木とのある静寂な隣の修道院の広庭を、初めは見おろすことができていたけれど、それはあまりによすぎて長つづきはしなかった。ちょうどクリストフの室の窓の正面に、七階建ての家が建築されかかっていて、そのために眺望《ちょうぼう》がさえぎられ、クリストフは四方を閉ざされてしまった。愉快なことには、滑車のきしる音や、石をけずる音や、板を打ち付ける音などが、毎日朝から晩まで聞こえてきた。その労働者の間には、先ごろ彼が屋根の上で知り合いになった屋根職人もいた。二人は遠くから合図で親しみを通じ合った。あるときなど、彼はその職人に往来で出会って、酒場へ連れて行き、いっしょに飲んだことさえあった。オリヴィエはびっくりして眉《まゆ》をしかめた。がクリストフは、その男の滑稽《こっけい》な饒舌《じ
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