宴塔X人が書き得るすべてのことを列挙してみせた。
「君たちは柄にもない種類のものばかりに気を向けて、自分の才能に適したものは何一つ作っていない。君たちは、優雅と、華美な詩と、身振りや足取りや態度や流行や服装などの美とをもってる、民衆である。そして、詩的舞踏の比類ない一芸術を創《つく》り得たはずなのに、もう今では舞踊劇《バレー》を書く者がいない……。――君たちは、知的な笑いをもってる民衆である。それなのに、もう喜歌劇を作りもしないし、または喜歌劇を、音楽以下の者どもの手に委《ゆだ》ねてる。ああ僕がもしフランス人だったら、僕はラブレーのものを音楽にし、滑稽《こっけい》叙事詩を作ってやるんだが……。――君たちは小説家的民衆である。それなのに、物語音楽を作っていない(というのは、ギュスターヴ・シャルパンティエの通俗物なんかは、物語音楽とは言えないから)。君たちは心理解剖の天分や性格|洞察《どうさつ》力などを利用していない。ああ僕がもしフランス人だったら、僕は音楽で性格描写をやってみせるんだが……(下の庭のリラの花陰にすわってるあの少女を描いてみせようかね。)弦楽四重奏曲でスタンダールみたいなも
前へ 次へ
全333ページ中206ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング