オて相手に弾丸を命中させようなどとは、思ってもいなかった。相手をわけなく片付けるほうがはるかに容易であるのに、さあ射殺するぞという様子ばかりをしてみせるのは、この上もなく馬鹿げたことだと知っていた。しかしクリストフのほうは、上衣をぬぎ捨て、シャツをくつろげて、太い首筋とたくましい拳《こぶし》とを示しながら、額《ひたい》を下げ、レヴィー・クールを見つめ、元気いっぱいになって待ち受けていた。殺害の意志がその顔つきにありありと浮かんでいた。その様子を観察していたブロシュ伯爵は、文明が決闘の危険をできるだけ防止せんとしたのは幸いなことだと、考えていた。
 二つの弾丸が両方から発射されたが、もちろん被害は少しもなかった。介添人らは争って二人の無事を祝した。それで名誉は満足されたわけである。――しかしクリストフは満足しなかった。もう済んだのだとは思わずに、ピストルを手にしたままつっ立っていた。前日射撃場でやったように、弾丸が命中するまで打ち合いたがっていた。相手と握手するようにグージャールから言われると、その茶番狂言が癪《しゃく》にさわった。相手は例のいつに変わらぬ微笑を浮かべて、彼のほうへ堂々と
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