激買Bー・クールがしているように、偉人を貶《けな》して公衆の下劣さに媚《こ》び愚衆を笑わすることだけを、その批評の眼目とすること、その両者はまったく別事であった。つぎに、クリストフはいかにも自由な批判を事としてはいたが、常にある種の音楽にたいしては、それを黙って別な場所に安置し、けっして手を触れなかった。それは、いわゆる音楽よりもより高きより善き音楽であり、慰藉《いしゃ》と力と希望とを汲《く》み出し得る偉大な有益な魂そのものであった。ベートーヴェンの音楽はそういうものだった。それがある下司《げす》野郎から侮辱されてるのを見ると、彼は我を忘れて激昂《げっこう》した。もはや芸術上の問題ではなく、名誉の問題だった。すべて生に価値を与えるもの、愛、侠勇《きょうゆう》、熱烈な徳操、などがみな含まれていた。それが害されるのは、愛慕せる女の侮辱を聞くのと同様に、許し得られないことだった。憎悪し屠殺《とさつ》するのほかはなかった……。ましてその侮辱者は、クリストフがだれよりももっとも軽蔑《けいべつ》してる男ではなかったか! そして偶然にも、その晩に、二人は顔を合わした。

 オリヴィエと二人きりになら
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