紀の間得ていた偉大さ――それらのものが、それを少しも理解せず、それを心の底では憎悪し、それをいつでも永久に粉砕しつくし得る、暴戻《ぼうれい》な征服者の掌中《しょうちゅう》にあることを、われわれは知っていた。そしてそういう運命を守って生きなければならなかった。思ってもみたまえ、フランスの少年らは、敗北の影たちこめた喪中の家に生まれ、意気|沮喪《そそう》した思想に養われ、血腥《ちなまぐさ》い宿命的なそしておそらく無益な復讐《ふくしゅう》のために育てられたのだ。というのは、彼らはいかにも幼少ではあったけれど、彼らが意識した第一のことは、正理がないということ、この世に正理がないということだった。力が権利を圧倒するということだった。そういう発見が子供の魂を永久に毀損《きそん》したのだ、もしくは生長さしたのだ。多くのものは自棄《やけ》になってしまった。彼らはみずから言った。『こうしたものだとすれば、戦ってなんのためになろう? 活動してなんのためになろう? くだらないことはくだらないんだ。考えないようにしよう。享楽しよう。』――しかし抗争した者たちは、熱火にも堪え得るのだ。いかなる幻滅も彼らの信念を
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