れらはまた、フランス人の貧血に、活力の漸減《ぜんげん》に、関係がないではなかった。
クリストフとオリヴィエとが住んでる家の下のほう、四方壁に取り巻かれた底にある、優雅な庭は、かかるかわいいフランスの象徴であった。それは外部の世界に戸を閉ざしてる緑の一隅《いちぐう》だった。ただときどき、外部の大きな風が、渦《うず》巻きながら吹きおろしてきて、夢想してる若い娘に遠い畑地と広い土地との息吹《いぶ》きをもたらしてくるのだった。
今やクリストフは、フランスの隠れたる源泉を瞥見《べっけん》し始めたので、フランスが下劣な者どものために圧迫されるままになってるのを、憤慨せずにはいられなかった。その黙々たる優秀者らが潜み込んでる薄明の境は、彼には息苦しかった。堅忍主義は、もう歯牙《しが》を失ってる人々にはよいことである。しかし彼は、戸外の空気を、大なる公衆を、栄光の太陽を、幾多の魂の愛を、おのが愛する者をすべて抱きしめることを、敵を粉砕しつくすことを、戦いそして征服することを、必要としているのであった。
「君にはそれができる。」とオリヴィエは言った。「君は強い。君は征服するようにできている。それ
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