の老学者も、悲観家の技師も、牧師も、無政府主義者も、すべてそれらの傲慢《ごうまん》な者も失意の者も、皆働いていた。そして屋根の上には、屋根職人が歌っていた。
クリストフは家の周囲にも、すぐれた人々のうちに――彼らが団結してるときでさえ――同じ精神的孤立を見出した。
オリヴィエは自分が筆を執ってるある小雑誌に、クリストフを関係さしていた。それはエゾープ[#「エゾープ」に傍点]という雑誌で、標語としてモンテーニュの文を引用していた。
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エゾープは、他の二人の奴隷とともに売りに出されぬ。買い手は第一の奴隷に何をなし得るやを問えり。奴隷はおのれの価値を高めんがために、山のごとき大事業をもと答えぬ。第二の奴隷もそれに劣らぬ大言を払えり。エゾープの番となりて、何をなし得るやを尋ねられしとき、彼は言いけり。――「この二人にすべてを取られたれば、われのなすべきことなし。二人のみにてすべてをなし得べし。」
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それは、すでにモンテーニュが言ってるとおり、「知識を鼻にかけてる人々の厚顔さや法外な不遜《ふそん》さ」にたいする、蔑視《べっし》的な反動の
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