の作品は、われわれの思想を結合した果実である。
 私はこの作品に着手したとき、少数の友をしか期待し得なかった。私の望みはソクラテスの家の程度にとどまっていた。しかし年を経るに従って私はますます、同じものを愛し同じものを苦しむことにおいて、パリーと地方とを問わず、フランスとフランス以外とを問わず、いかに多くの同胞があるかを感じた。広場の市[#「広場の市」に傍点]にたいする軽蔑《けいべつ》を語ることによって、クリストフが自分の本心を――ならびに私の本心を――吐露するところの、この前の一巻が出たおりに、私はその証拠を得たのであった。私のいかなる著書も、これほど直接の反響を呼び起こしたものはなかった。実際のところ、それはただに私の声だったばかりではなく、また私の友人らの声だったからである。クリストフは私のものであると同様にまた彼らのものであることを、彼らはよく知っている。われわれはクリストフのうちに、われわれに共通な魂を多分に投げ込んでおいたのである。

 クリストフは彼らのものであるがゆえに、私は今日提供するこの一巻について多少の説明を読者にしておかなければならない。広場の市[#「広場の市」
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