リストフが自分の方へ来るつもりでいるのを覚《さと》っていた。しかし彼に話しかけることを考えただけで気遅れがして、隣室へ逃げ出そうかと思ったほどだった。それでもやはり拙劣にもそこに釘《くぎ》付けにされていた。二人は向かい合ってつっ立った。思ったところへ落ち込むにはしばらくかかった。そのままの状態が長引くにつれて、どちらも相手の眼に自分がおかしく映ってると思った。ついにクリストフは青年をまともにながめた。そして何の前置きもなしに、微笑《ほほえ》みながら武骨な調子で話しかけた。
「あなたはパリーの人じゃないんでしょう?」
 その意外な質問に会って、青年は当惑しながらも微笑んで、パリーの者ではないと答えた。その内ごもりの響きのある弱い声は、脆弱《ぜいじゃく》な楽器の音のようだった。
「僕もそうだろうと思っていました。」とクリストフは言った。
 そしてその妙な認定に相手が少し恐縮しているのを見て、彼は言い添えた。
「悪い意味で言ってるのじゃありません。」
 しかし相手の当惑は増すばかりだった。
 また沈黙が落ちてきた。青年は口をきこうと努めていた。唇《くちびる》は震えていた。言うべき文句がまとま
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