とを知っていた。一の神が彼の手を取って、彼を行くべきところへ導いていた。彼は幼い子どものようにその神に信頼していた。
数年以来初めて、彼は休息しなければならなかったのである。病気になる前の異常な知的緊張は、今もなお彼を疲憊《ひはい》さしていたが、そういう緊張のあとにおいては、回復期の倦怠《けんたい》でさえ一つの休息であった。数か月以来不断の警戒的気持に堅くなっていた彼は、次第に視力が散漫になるのを感じた。それでも彼は弱らなかった。いっそう人間的になった。天才の力強いしかし多少怪物的な生活は、遠景にひそんでしまった。あらゆる精神的熱狂を奪われ、活動に付随する冷酷無慈悲なものをすべて奪われた、通常の人間たる自分自身を、彼は見出した。彼はもはや何物をも憎まなかった。もはや腹だたしい事柄を考えなかった。あるいは考えても、単に肩をそびやかすばかりだった。自分の労苦を少なく考え、他人の労苦を多く考えた。地上のあらゆる方面において、不平も言わずに苦闘してる、貧しい魂らの黙々たる苦しみを、シドニーから思い起こさせられて以来、彼はそういう魂のうちに自分を忘れた。平素は感傷的でなかった彼も、虚弱の花とも
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