、病根は徐々にしか癒《い》えてゆかず、神経的な咳《せき》の発作が起こって、夜はそのために眠れなかった。医者は外出を禁じていた。それだけにまた、コート・ダジュールやカナリー島への転地なら大賛成だったろう。しかしクリストフは外出しなければならなかった。食事をしに出かけなければ、食事の方からやって来てはくれなかった。――また種々の薬も命ぜられたが、彼にはその代価を払う方法がつかなかった。それで彼は医者にかかるのをやめてしまった。まったく無駄《むだ》使いに終わるの思った。そのうえ彼はいつも医者と気が合わなかった。両者はたがいに理解することができなかった。それは相反した二つの世界だった。自分一人で一つの世界だとうぬぼれながら、人生の河から藁屑《わらくず》のように押し流されてる、この憐れな芸術家めにたいして、医者たちの方では、皮肉な多少軽侮的な憐憫《れんびん》の情をいだいていた。彼はそういう奴《やつ》らから、ながめられ触《さわ》られ取り扱われるのを屈辱のように感じていた。彼は病気の身体が恥ずかしかった。彼はこう考えていた。
「こいつ[#「こいつ」に傍点]が死んだらどんなにうれしいだろう!」
 孤独
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