、そのあとで、自分が稼《かせ》いだものではないとみずからとがめたりして、一人で自分を苦しめた。――その十五日後にヘヒトは、求められた金を一言も言わずに送ってきた。そして、クリストフの病気がつづいた数か月間、ヘヒトは一度もその容態を尋ねなかった。彼はたとい親切を施しながらも、人に愛されない天才をそなえていた。またそれは、親切は施すが愛しはしないからでもあった。
 シドニーは毎日、午後と晩とにちょっとやって来た。クリストフの晩飯を支度《したく》してくれた。少しも音をたてなかった。つつましく仕事にかかっていた。彼のシャツが傷《いた》んでるのを見ると、一言もいわずにもち帰って直してくれた。二人の関係にはそれとはなしに、あるこまやかな親愛さが滑《すべ》り込んでいた。クリストフは年老いた母親のことを長々と話した。シドニーは感動した。彼方《かなた》に一人ぽっちでいるルイザの地位に身を置いてみた。そしてクリストフにたいしては母親らしい感情をいだいた。クリストフの方は彼女と話をしながら、弱って病気でいる時にはことに苦しい家庭的愛情の欠乏をみずからまぎらそうとつとめた。他の者といっしょの時よりもシドニーと
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