ス人には、一人も出会ったことがない。」
「そうでしょう。」とシドニーは言った。「あなたは金持ちばかりを御覧なすったんです。金持ちはどこへ行っても同じものですよ。あなたはまだ何にも御覧なすってやしません。」
「そうです。」とクリストフは言った。「これから見てみよう。」
彼は初めてフランス民衆を瞥見《べっけん》した。その土地と合体し、多くの優勝階級や多くの一時的主君が過ぎ去るのを、土地とともに見たのであるが、自身は決して過ぎ去ることがなく、永久に継続するらしい民衆だった。
彼は次第によくなって、起き上がれるようになり始めた。
彼が気をもんだ第一のことは、病気中にシドニーが立て替えてくれた入費を、彼女に返済することであった。仕事を捜すためにパリー中を駆け回ることがまだできなかったので、余儀なく意を決してヘヒトへ手紙を書いた。次の仕事にたいして前借をさしてくれと頼んだ。冷淡と親切とが不思議に交り合った性格のヘヒトは、彼に十五日以上も返事を待たせた。――十五日、その間クリストフは、シドニーがもって来てくれる食物になるべく手をつけまいとし、無理に強《し》いられると牛乳やパンを少しばかり取り
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