とってさらに危険なのは、彼らが故郷の地から根こぎにされることであり、遠く大都市の中に散乱させられることである。しかし、かく異境に散り失《う》せ、たがいに孤立していても、よき人種の個性は存続して、周囲のものと交混することがないのだ。――クリストフがパリーで見たような事柄を、シドニーはほとんど知らなかったし、知ろうとも欲しなかった。感傷的で不潔な新聞文学は、政治上の消息と同様に彼女のもとまでは達しなかった。彼女は通俗大学の存在をさえも知らなかった。もし知っていたとしても彼女はおそらく、説教を聴《き》きに行くくらいのこととしか思わなかったろう。彼女は自分の職務を行ない、自分の思想を頭に置いていた。あくせくして他人の思想を考えはしなかった。クリストフはそれを彼女にほめてやった。
「何も不思議がることはありませんよ。」と彼女は言った。「私ばかりでなく皆《みんな》そうです。あなたはフランス人を御覧なさらなかったんでしょう。」
「いや、もう一年間も僕もフランス人の間に住んでいる。」とクリストフは言った。「そして、楽しむことや楽しんでる人の真似《まね》をすること以外に、何かを考えてるように見えるフラン
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