自分自身をあざけった。主人たちの方へ批評の眼を向けないでもなかった、彼らの閑《ひま》な生活から生ずる種々の気苦労、夫人の気病みや憂鬱《ゆううつ》、すぐれた人間だと自称してる彼らのいわゆる業務、ある書面や楽曲や詩集などに彼らが覚えてる興味など。彼女の見識は多少粗雑ではあったが、ごくパリー式な婢僕《ひぼく》の軽薄さと、自分にわからないものしか賞賛しないごく田舎《いなか》式な婢僕の深い愚蒙《ぐもう》さとから、離れていたので、その明識でもって彼女は、遊戯的な音楽やつまらぬ饒舌《じょうぜつ》など、この虚偽な生活中に大なる位置を占めている、知的な全然無用なそのうえ退屈なそれらの事柄にたいして、一種敬遠的な蔑視《べっし》をいだいていた。万事退屈のあまりこしらえ出されたと思われるその贅沢《ぜいたく》な生活の、空想的な種々な快楽や苦労に、自分が奮闘してる現実の生活を、ひそかに比較してみざるを得なかった。それでも別に反抗心は起こらなかった。世の中は万事そうしたものなのだ。彼女はすべてを、悪人をも馬鹿をも許していた。彼女は言っていた。
「世間は持ち寄りですよ。」
彼女は宗教心で支持されているのだ、とクリス
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