。病院にはいりたくないと叫び、ここで一人で死にたいと叫んだ。が口からは、訳のわからない音しか出なかった。それでも女は了解した。というのは、彼の味方をして、彼を落ち着かしてくれたから。その女がだれであるかを彼はしきりに知りたがった。非常な努力をしてまとまった言葉を発し得るようになると、すぐにそのことを尋ねた。彼女の答えでは、屋根裏の隣り同士の女で、彼がうなるのを壁越しに聞き、助けを求めてるのだと考えて、勝手にはいって来たのだった。口をきいて疲れてはいけないと、彼女はていねいに頼んだ。彼はそれに従った。そのうえ、今しがた口をきいた努力のために、がっかりしてしまっていた。で彼はじっとして口をつぐんだ。しかし彼の頭は働きつづけて、散らばった記憶をどうにか寄せ集めようとした。いったいどこでこの女を見かけたのかしら?……しまいに彼は思い出した。そうだ、屋根裏の廊下で出会ったことがあるのだった。下女で、シドニーという名前だった。
 彼は半ば眼をつぶりなから、彼女をながめた。彼女はそれに気づかなかった。背の低い女で、真面目《まじめ》な顔つき、つき出た額《ひたい》、ひきつめた髪、骨張った蒼白《あおじろ》
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