ン、コントラバス……などを指揮し演奏し、熱狂的にひき吹き打ちたたいた。不幸なる彼は胸に納めた音楽で沸騰していた。数週間以来音楽を聞くことも演奏することもできなかったので、高圧を加えられた汽鑵《きかん》のように爆発しかけていた。若干の執拗《しつよう》な楽句は、螺錐《ねじきり》のように頭脳へはいり込んで、鼓膜を貫き、彼に苦悩の唸《うめ》きをたてさせた。それらの発作が済むと、彼はまた枕《まくら》に身を落して、疲れきり、汗にまみれ、息をあえぎつまらした。寝床のそばに水差を置いといて、ごくりごくりと飲んだ。隣室の物音や、屋根室の扉《とびら》の音にも、ぴくりと震え上がった。周囲にぎっしり住んでる人々にたいして、幻覚的な嫌悪《けんお》の念をいだいた。しかし彼の意志はなお闘《たたか》いつづけ、悪魔にたいする戦いの、進軍ラッパを吹奏していた……。「世に悪魔満ち渡り[#「世に悪魔満ち渡り」に傍点]、われわれを[#「われわれを」に傍点]呑噬《どんぜい》せんとするとも[#「せんとするとも」に傍点]、あに恐るることがあろうぞ[#「あに恐るることがあろうぞ」に傍点]……。」
 そして、彼の一身を流し去る燃える闇《
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