街路で雨に打たれながら、舗石の間の水|溜《た》まりにも靴からしたたる水にも、ほとんど気がつかなかった。セーヌ河の上には黄色っぽい空が、日暮れの光を受けて、内部の炎――ランプのような光で輝いていた。クリストフはある眼つきの幻覚を眼の中にもっていた。彼にとっては、何物も存在しないように思われた。そうだ、馬車もその無慈悲な響きで舗石を揺《ゆる》がしてはしなかった。通行人もその濡《ぬ》れた雨傘で彼に突き当たりはしなかった。彼は往来を歩いてるのではなかった。自分の室にすわり込んで夢想してるがようだった。もはや自分の身も存在しないがようだった。……と突然――(彼はそれほど弱っていたのだ)――眩暈《めまい》にとらえられて、前のめりにぱったり倒れる心地がした……。それはほんの束《つか》の間だった。彼は両の拳《こぶし》を握りしめ、足を踏みしめて、まっすぐに立ち直った。
ちょうどその瞬間に、彼の意識が深淵《しんえん》から浮かび上がってきた間ぎわに、彼の眼は街路の向こう側の一つの眼とぶつかった。彼がよく知ってる眼つきで、彼を呼んでるように見えた。彼ははっとして立ち止まり、どこで見たのかと考えた。とすぐに、
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