に上ってきた。そして次第に包み込まれていった、人類の夢に――人の魂の不思議な花に……。
 絵画陳列室の金色の埃《ほこり》、燦然《さんぜん》たる爛熟《らんじゅく》せる色彩の庭、画面の立ち並んだ牧場、しかも空気の不足してるそれらの中にあって、クリストフは熱に浮かされ、半ば病気の心地だったが、はっと心打たれた。――飢えと、室の微温と、おびただしい絵画とに、彼はぼんやりして、ほとんど何にも見ずに通り過ぎ、眩暈《めまい》がしていた。そして水に臨んだ先端で、レンブラントの善良なるサマリア人[#「善良なるサマリア人」に傍点]の前まで来た時、彼は倒れまいとして、絵画のまわりの鉄欄に両手でつかまり、ちょっと眼を閉じた。その眼をまた開いて、すぐ前の正面にあるその作を見ると、魅惑されてしまった……。
 日は暮れかかっていた。昼の明るみはすでに遠ざかって消えていた。眼に見えない太陽の光が闇《やみ》のうちに沈み込んでいた。昼間の働きに倦《う》んでじっと休《やす》らってる魂から、幻覚が出て来ようとする怪しい時刻だった。すべてのものが黙っている。聞こえるものは自分の動脈の音ばかり。もはや身を動かす力もなく、ほとんど
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