の肥満した頤《あご》、グルーズの、退屈そうな羊飼いや、コルセットの中にしめつけられてる太った羊飼いの女、よく捏《こ》ね上げられた魂、淑《しとや》かな流し目、フラゴナールのすり切れたシャツ、すべてそれらの詩的な肉体美も、世間の艶種《つやだね》を満載している新聞紙にたいするくらいの興味をしか、クリストフには与えなかった。彼はその豊麗な諧調を少しも了解しなかった。ヨーロッパのうちで最も精練されたその古い文明の、逸楽的な時として憂鬱《ゆううつ》な夢にたいして、彼はまったく門外漢であった。また十七世紀のフランスについても、そのあらたまった敬虔《けいけん》さやはでやかな肖像を、彼はやはり味わえなかった。その大家のうちの最も真面目《まじめ》な人々の多少冷やかな謹直さ、ニコラ・プーサンの尊大な作品やフィリップ・ド・シャンパンニュの蒼《あお》い人物の上に広がってる、魂のある灰色味は、クリストフをフランスの古い芸術から遠ざけてしまった。また新しいものについても、彼は少しも知るところがなかった。知ってるとすれば、誤り知ってるばかりだった。ドイツにいる時彼が心ひかされた唯一の近代画家ベックリン・ル・バロアは、
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